いのちの輝き体験教育旅行第1号を終えて・・・

東井義雄記念館長 衣川清喜

豊岡市の新規事業「いのちの輝き体験教育旅行事業」の第一号として神戸市立布引中学校二年生八十四名(先生十名)が来但され、二泊三日の日程でコウノトリ育むお米の田植えや田舎生活など多彩な体験をしました。

五月ニ十七日(木)早朝神戸を出発し午前中は豊岡市立コウノトリ文化館で野生復帰の取り組みを学びました。

中奥館長さんのお話を聞いている最中にコウノトリ三羽が生徒さんの頭上を悠然と舞い、文化館の屋根に止まり出発まで見守ってくれました。 

コウノトリの郷公園より但東へ「ようきなった」の横断幕、歓迎の言葉、受け入れ農家との対面等入村式のあと夕刻には各宿泊農家に入り自家菜園の収穫や料理のお手伝いのあと夕食・団欒となりました。

 二十八日(金)午前は、ひょうご安心ブランド野菜団地「(有)夢大地」の小西社長の講話と、もぎとりイチゴ園でのイチゴ狩りと親株のあと片付けをしました。

午後はコウノトリ育むお米の田植に「(有)あした」の霜倉社長の指導で挑戦、寒い天候にもめげずどろんこになりながら二時間の奮闘、広い田面に青々とした幼い苗が風に揺れ労苦をねぎらっているようでした。

冷えた体を「シルク温泉やまびこ」で温め、各宿泊農家に帰り夕食のあと家族の皆さんとの団欒やシカ探し等一層絆が深まりました。

 二十九日(土)午前中菜園の手入れ、餅つき、そば打ち、地域の人たちとのグラウンド・ゴルフ等々各農家でなごりの時間をすごしました。

午後の閉村式では、生徒代表、校長先生のお礼の言葉につづいて生徒さんによる「ふるさと」の合唱に胸が熱くなり「また来るね」の言葉と一人ひとりからお礼文をいただき泪泪でした。

ちぎれるほど手を振る生徒さんと遠ざかるバスがみえなくなるまでたたずんでいた農家の皆さんが忘れられません。

いのちの輝きの体験教育旅行受け入れを目指し準備を進めてきました私たちが「感動をいっぱい頂きました」と農家の皆さんからお聞きしました。

* 布引中学校の事前学習

布引中学校では、道徳の授業に東井義雄先生の略歴と教育理念を紹介し、「村を捨てる学力と村を育てる学力」の一説「澄ちゃんという子供の勉強」をとりあげ「生物」「算数」「国語」の勉強も「身のまわりの物事を通してじっと考えてみると、いろいろなことを教えてくれる」こと、昭和三十年頃の円山川に群れるコウノトリと但馬牛の写真を見て感じること、一人ひとりが『いのちの輝き』を感じた出来事などを話し合いまとめていただいていました。

* 校長先生より体験旅行を終えた生徒さんのご家族へのお手紙の中で・・・

 東井義雄先生の「心のスイッチ」を紹介され、二年生が野外活動で豊岡市但東町を訪れ、絶滅したコウノトリを甦らせる地域をあげての取り組みや、教育界の国宝と呼ばれる東井義雄先生の出身地であることも紹介をしていただき、子どもたちが『心のスイッチを入れた』とき、「君はえらい」と褒めてあげて下さいと結んでおられます。

 東井義雄先生が退職された昭和四十八年春「再び親子のコウノトリが 但馬の大空を舞うにちがいない そんな但馬が日本・世界を救う」と百五十余行の詩を発表されました。

現在但馬の空を親子あわせて三十八羽が舞い、訪れる人々に感動をよびおこしています。

 コウノトリ育むお米は、コウノトリの餌となるドジョウ、フナ、カエルの棲める田園環境をつくり、「コウノトリ育むお米」を生産する泥田での「田植え」「あぜ道でほおばるおにぎりの味」は中学生の忘れられない思い出となっていることでしょう。

一人ひとりがいのちを大切に思い、すべての人や、あらゆる生き物のいのちを尊重する「ふるさと」として「いのちの輝き体験教育旅行」が一層広がりを見せることを願っています。

 最後になりましたが、農家民宿ならびに民泊農家二十戸の皆様はじめ多くの方々に支えられて「いのちの輝き体験教育旅行」が無事実施できましたことを心より御礼申し上げます。